トジツキハジメ 白猫 【感想】
↑ サイズ感……
あらすじ
終電を終点まで眠りこけてしまったところを起こしてくれた男の子。それが実は介助泥棒で……(表題作・白猫)
短編集のあらすじってどうすりゃいいの。
可愛らしい受けと、長身の攻めによる、まっすぐな短編集
トジツキハジメさんの初コミックで、表題作含む5話+描きおろしが収録されています。
トジツキハジメさんの本は、なかなか長い期間をずっと追って買っていました。
その間に絵柄や話の雰囲気がかなり変化していき、勿論その都度楽しく読ませて頂いていたのですが、この初期の頃の、こなみ詔子さんに影響を受けていたであろう絵と、素直なお話たちが、いちばん好きです。
この短編集では、受けの男の子がみな黒目がちで可愛らしく、といってまるっこい可愛さではなく、攻めの男の子はみな長身で面長の塩顔。
すっきりとした絵ですが、間や表情に色気があって、捨てる話のない1冊です。
収録されているお話は全て好きですが、「秘密の話」と「エンドレスエンド」の2作がとりわけ好きなので、そちらを中心に書きたいと思います。
秘密のこころを打ち明けさせる 「秘密の話」
主人公に想いを寄せる友人・河森(かわもり)と、その想いに気づきながらも知らないふりを続ける主人公・依(より)のお話。
終始切なさが漂うお話で、その空気が良いです。
ドラマティックな設定ではないのに、少ない言葉の裏で心を探り合うのが色っぽい。
特に、河森が依の秘密の心に踏みこんでいくところは、最高潮に色っぽいです。
空気感が濃密なので、改めて読み返してみて、こんなに短いお話だったのか、と驚きました。
世界の終わり、恋の始まり 「エンドレスエンド」
誰もいなくて、世界の終わりみたい。
そんな人気のない元旦の街で、阿久津(あくつ)は、隣のクラスの水本(みずもと)と偶然出会う。
それをきっかけに、阿久津は水本が気になりだして……。
おおげさなところがなく淡々としていますが、恋が始まっていく、進んでいく、その只中の、こころの揺れや傾きが染みるお話です。
そしてとにかく水本が可愛く、阿久津が水本を可愛く思うのと同じ速度で水本が可愛くなっていきます。
本心を悟られまいとしているときと、自然と零れてしまうときと、両方の表情がいちいち可愛い、伏し目がち水本。
現実の恋愛がどうあれ、怖がりながらも相手に自分の心を預けて、不安ながらも相手を受けとめる為に自分の心をあける、といった不器用で真摯な行為が、お互いの間で結実する瞬間を見るのは、幸せで楽しいです。
眼鏡のブリッジを押し上げる阿久津の大きな手が印象的で、話が進むにつれその大きな手が色気を帯びていくところもとても好きです。
電子書籍化はされていません
紙の本しかないですね。
トジツキハジメさんの作品全般がほぼ電子書籍化されていないようです。
もったいない。
価格:639円 |
冒頭でお世話になったサイズ感honto。レビューが上手な方が多く、読んでいて楽しいです。
先に書いたように、ここからトジツキハジメさんの絵やお話はどんどん変わっていきます。
ポチポチしてみた結果、私が読んだのは 「カナさん」 (2013年)までの模様。
未読ですが、2015年の作品。
青年誌で連載していたもの。
当たり前ですが、作者さんの描きたいものや興味、進みたい方向は変わっていき、受け手もまた変わります。
それらがいつまでも重なっていくわけではないことは、しんみり淋しくもありますが、また重なる可能性を孕んだ、絶え間ない楽しみなのかもしれません。
読んで頂きありがとうございました。